自然のおきて(7)
でも、どうしたことでしょう。郵便箱のおじさんの声は、しずんでいるのです。
「ところで束君。そろそろ僕たちもお別れのときが来たね」
「な、なんだって?」
束は意味がよくわからず、聞き返しました。
「僕たちの物の世界にもきまりがあるんだよ。それはほかの人が見ているところではね、絶対に動いたり、物を言ってはいけないんだ。それを僕はやぶってしまった。」
郵便箱のおじさんの声は悲しそうです。
束には思い当たることがありました。それはあの北欧の童話の国へ旅をしたときのことです。マッチ売りの少女を助けていて、帰るのか翌日の昼間になったではありませんか。
あれは、人の寝静まっている真夜中にもどっていななければいけなかったのでしょう。
「お別れなんて、ぼくはいやだ!おじさんがなんと言おうと友達だよ、僕たちは!」
束は駄々をこねるように言いました。
「もう、どうしてもだめなんだよ。さようなら。」
赤い郵便箱の声は途切れました。後はなんといっても返事をしてくれません。
「さようなら。」