自然のおきて(6)
「そうか。むらじゃ、黒岩だけの主といわれた人の言うことじゃ、信用していってみべえか。」
みんなの意見がまとまりそうなので、おらがさんは気に入りません。
「ちょっくらまてっ。まだ天狗の鼻とはきまっとらんだで。」
「じゃおらがさん、よそを探すかね?」
「うんにゃ。天狗の鼻はおらが先頭にいくだ。みんなあとにつづけや!」
おらがさん一行の救助隊が、天狗の鼻岩の下で少年たちを発見したのは、それから5時間ほどあとでした。みんな、食べ物はないし、道はわからないし、寒さに、生きた心地もなく震えていました。でも負傷者をタンカに載せ、人員無事帰りました。
そのあとで、束が少年たちの遭難場所を知っていたことが、村人たちの話題になり、たすけられた子らの親は、とてもかんしゃして、束の家へお礼に来ました。
束は日のくれるのを待っていました。村の子供たちが、束君は郵便箱の所でよく遊んでいるけど、なぜだろう。などとふしぎがっていうようになったからです。
一番星の見えるころになって、バス駅にそっとちかづきました。
「郵便箱のおじさん、今日はありがとう。」
「うん。間に合ってよかったね。」
「そうだよ。もう少し見つけるのが遅かったら、危なかったと先生も言っていたもんね。」
という束の声は、うきうきしています。