自然のおきて(5)

「各組ひとりずつ組長を出してほしいな。監督さんはおらがやるで!」

と大声で言ったときです。

束が走ってきました。はあはあと息が切れそうです。

「おとうさあん!場所がわかったよ。」

みんなはびっくりして束のほうを見ました。

おらがさんはせっかく作った、得意のポーズの引っ込みがつかなくて、

「にゃにい?遭難の子供たらの場所がわかったって?そんなばかな!」

と思わず怒鳴りました。でも、お父さんはすぐ束のところに駆け寄りました。

「どこだ?その場所は!」

「あのね。天狗の鼻下のくぼみだよ。けがしてる子もいるよ!」

集まった人の間に動揺が起こりました。

「ほんとうだべか?まあ間違いなくあそこにいれば、手間がだいぶ省けるっちゅううもんだが。」

「でもな、それがほんとなら、またえらい所へ登っちょるなあ。」

と口々に言い出しました。天狗の鼻は、黒岩岳でいちばんの難所です。

「みなさん。この子のいうことは不思議にあたることがあるのです。わしも、きっとそこに居ると思うとります!」

と、お父さんは力を込めて言いました。

 

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