自然のおきて(4)
束の家の前には大勢の人が集まっています。割ぽう着の女の人たちは、大きな釜を庭にすえて、炊き出しをしています。向こうには、もうおにぎりが山のようにできています。
足ごしらえを厳重にした村のおじさんたちは、さがしだす方法や、遭難者の安否について、色々話しあっています。
村長さんがやってきて、集まってきた人たちの前に出ると、話はやみました。村長さんは老眼鏡のずり下がった上からみんなを見ました。
「ああ、みなさん、ごくろうさんで。それじゃ、今から探しに出かけてもらいますぞ。」
「いきますよ。だが村長さん。わしらは忙しいんだ。遭難のたびに狩り出されちゃたまらんで。それに場所もわからんじゃろが?」
「まあまあ。」
と、村長さんはいいました。
「場所の見当がつかんで、悪くすると幾日もかかるかも知れん。だがな、とにかく救助せにゃあかん。人命にゃかえられん!」
村の人たちも、みんなうなずきました。
今度は、おらが村会議員さんが前に出ました。
「ではおらが、探す場所わけ するでな、まんず3組に分けてと―――。」
と、おらがさんは持ってきた地図を広げると、赤鉛筆で線を書き入れました。