母リスと子リス(9)
母リスは、もうつかれてへとへと。今にも倒れそうです。でも湖で苦しんで呼ぶ子リスの声を聞くと、また力を奮い起こして、
「まっておいで。今母さんが助けてあげるからね!」
と土手をかけおりかけあがり、尾を湖につけては水を運びました。
ああ、早く何とかしなければ。
束は自分のことのように気をもんで、手や足を夢中で動かしました。
そのときでした。暗い東の空を赤く光る物体が、円盤のように、一直線にこちらに向かって飛んできます。あ、赤い郵便箱だ。
「おじさあん、ありがとう。あの子リスの所へ早くっ。」
「ようし!」
郵便箱のおじさんは、束を乗せてすいーとカーブを描いて飛ぶと、もう、湖の真ん中に来ていました。束は両手で子リスを救い上げると、郵便箱のおじさんは、一度高く空に舞い上がり、母リスの待っている岸におりました。
母リスは狂ったように喜んで、手をこすって子リスの体をあたためたり、おなかを押さええて水を吐かせたり、涙ぐましいかいほうをしています。