母リスと子リス(10)
やがて元気になった子リスを連れて、いそいそと、あのほら穴の家に帰っていきました。
束はふとあたりを見回すと、赤い郵便箱のおじさんがおりません。
「おや、どこへいったんだろ?」
と思ったとき、目が覚めました。束はすぐ、きのう仕掛けてきたわなを思いました。
「しまった!」
束は、大声で叫んでとびおきました。仕事場のほうでは、もう、ごとごと音がしています。お父さんがこんにゃくをつくりはじめたのでしょう。束は朝ごはんの支度をしている、お母さんの所へいくと、
「ちょっと山へ行ってくるからね。」
とことわって、家を飛び出しました。
「束っ、朝ごはん食べておゆき!」
とおかあさんがいったころには、もう野うさぎのように山道を走っていました。
さわやかな朝の山、よく晴れた空。夕べきつねにばかされたと思って怖かった道は、うそのように気持ちのよいのもでした。