母リスと子リス(5)
同じクラスにお金持ちの子がいます。その子の家は、立派な木のたくさん植わった山をいくつか持っていました。山の仕事をする人を、何人も使っていました。
その子が、このごろ、束が人気者になってきたので、何かと意地悪するようになりました。もう前のように威張っても、あまりみんながついてこなくなってきたのです。
ある日、その子は、学校にリスの入ったかごを持ってきました。みんな見に行きました。
なかでは、子リスが小さな車の輪をかたかたと、ひとりで回しています。しまのある灰色の毛や、ふっくらしたしっぽ、まん丸い目など、とてもかわいいのです。
「やい、お前なんかに見せてやらないぞ。」
その子は束が近づくと、大声で叫びました。
「子のリスはな、僕んちで使っている人が山で見つけて、捕まえてきたんだぞう。仲間の子だけ見せてやらあ!」
「ぼくにも、リスくらい捕まえられるよ。」
束は負けてはいません。
その日、学校から帰ると、すぐ森に行きました。そこには、モチノキがたくさんあります。束は皮をはいで、小川にはいると、石の上でこつこつとたたきました。やがて黒い皮や木くずが流れてしまうと、後には粘りのある鳥もちが出来上がりました。それをふきの葉に包むと、家に帰って物置からかすみ網を持ち出しました。リスを捕らえに行くつもりです。
でも、リスがいる山の湖に行くには、郵便箱のおじさんの前を通らなければなりません。