母リスと子リス(4)
このころ、家の商売はいそがしい一方です。おかあさんも、この間までの悲しそうな顔は、忘れたように、にこにこしています。もう仕事のなくなる心配はありません。
ある日、ひょっこり幸福が舞い込んできた、ということでしょうか。
束は、学校の友達も、だんだんとできてきました。いままでは、かぎっ子だった束は、楽しそうに親たちと話をする子たちの仲間に入れず、いつも一人ぼっちでいたのです。
山間のところどころに、一掴みぐらいづつしかいない、村の家の子供たち。束の小学校は、先生が6人、生徒が50人くらいしかいません。こどもたちは、キジが鳴き、のウサギが走る静かな里に育ってゆくのでした。
でも、このごろ、都会の色々な人たちが入ってきて、子の村の平和を乱すようになりました。時代の波というのかもしれません。
でも、郵便箱のおじさんは、この人種がひどく嫌いです。自動車のガスで空気を汚したり、箱にぶっつけたりするからです。
なかでも、がまんできないのは、遊びに、釣りや漁をする大人たちでした。彼らは山のかわいい仲間たち、小鳥や小さな動物を撃ち殺し、小魚まで釣ってしまうからです。
きれいな小川、青い湖、せせらぎの聞こえる谷間。やがてここに住む、コイやアユなどが、いなくなる日が来るかもしれません。
赤い郵便箱は、束にも、山の仲間をいじめたら絶交だ、とよくいいました。ところで束は、すごくおこらせるようなことをしたのです。