母リスと子リス(3)
4,5日たってから、束は知らない女の子から手紙を受け取りました。
「束さん、先日はありがとう。あの日色々お世話になった運転手は、私の父です。おかげで、大切な品は、遅れないで済みました。わたしたちは、父ひとり子ひとりで、さみしい暮らしです。友達になってくださいね。
こちらの空は、スモッグでよごれています。束さんの住んでいるお山の空気は、きれいでしょうね。さようなら。道子。」
きれいな色刷りの母と子のリスが書いてある便せんです。道子ちゃんは自分たちのことを、りすにたとえたのかも知れません。
束は意外でした。いつも想像している町は、きれいな家、ピカピカ光るピアノ、美しい着物の女の子、すばらしい自動車、それは、胸のときめくような憧れの世界だったのです。
ところが、道子ちゃんの手紙では、空気が汚くて、かえって束の住んでいる田舎の山の方が、いいように書いてあるではありませんか。束にはわからなくなりました。
「道子ちゃんて、どんな子だろう?」
「そりゃあ頭のいい、かわい子ちゃんさ。」
赤い郵便箱のおじさんは答えました。
「ぼく、おしばなでもおくってやろうか。」
束は押し花を作ることが好きでした。山や野で珍しい草花を見つけると、大切に保存します。
束の押し花採集ブックには、美しい色の草花が手入れよくおさまっているのです。
「何がいいかな、三つ葉のクローバー、リンドウ、おみなえし、と色の取り合わせのよいのをあげようか?」