港まつり(9)
月があたって、水平線が光ってみえます。この広い海は何処まで続いているのでしょう。
「渡り鳥は向こうからやってくるのよ。」
道子ちゃんは、南の方を指して言いました。
「じゃあ、春もそこからくるんだね。」
束は、おじいちゃんが、つばめが春をもってやってくるといったことをおもいだしました。
「海の向こうはどんな所かしら?」
「それは、きっと白い砂浜にヤシの木が茂る夢のような島や、おもちゃの兵隊が守るおとぎの国もあると思うな。」
「いってみたいなわ。」
道子ちゃんが言いました。そのときです。月をかすめて何か飛んでくるものがあります。束は目を凝らしながら叫びました。
「ああ、やっぱり郵便箱のおじさんだ!」