マッチ売りの少女(1)
「さあ乗りなよ。」
郵便箱のおじさんは舞い降りると、ちょっとはにかんだように言いました。
道子ちゃんも束も、郵便箱の上にしっかりとつかまりました。
「ぼくは、きっと来てくれると思ったよ。」
「ふふふ、束君がいなくいなってから、さみしくってね。」
道子ちゃんは、体をかたくして黙っています。
日が下に見えています。赤い郵便箱は高く舞い上がりました。
きらきら光る海原は、どこまでも続いています。
やがて赤い郵便箱のおじさんは、ひどく気取ったように言いました。
「さて、ご主人さま。わたくしめはお二人をどこへご案内いたしましょう?」
その言い方がおかしかったので、束はくすくす笑いました。でも道子ちゃんは小さな声で、ぽっつりといいました。
「アンデルセン・・・・。」
郵便箱のおじさんは、思わず調子をみだして、海に落ちるのではないかと思うほどびっくりしました。
「な、何だって・・・・。」