マッチ売りの少女(2)
「アンデルセンの書いた北欧のおとぎの国へ行きたいわ。」
「他はあ、こりゃ、また、えらいことになったぞ!」
さすがの赤い郵便箱のおじさんも困ったように考え込んでしまいました。
「よしゃ、つれてってあげるで。少し寒いかも知れんが、しんぼうしなよ。」
束は耳のはたを吹きすぎる風の音を聞きました。すごいスピードです。
広い海を二つ越えたとき、向こうに新しい陸地が見えてきました。まだお昼ごろだと言うのに、太陽は遠く斜めから射して、地上は暗く、雪がちらちら降っています。ここの国は冬らしいのです。
大きな4枚の羽をゆっくり回す風車小屋や、十字架の光る脅威会の屋根の上も飛び越えてゆきました。
やがて、ますます激しくなった吹雪の中に、レンガ造りらしいがっちりした家や高いえんとつがほのかに見えてきました。
「ああ、私が小さい時見た景色だわ。」
と、道子ちゃんがつぶやきました。でも、それは美しい童話を読んで、心の中で描いた空想の景色だったのかもしれません。