港まつり(8)
「おやっ?束君じゃあないか!」
と、言った人があるので見ると、知らないおじさんが、女の子と立っています。
「ぼくだよ。そら、君の村で車を落として困っていた運転手だよ!」
「あ!おじさんか。」
と思わず言いました。
では女の子は道子さんでしょうか。
「束さんね、わたし道子よ。この間は召すらしい押し花送ってくれてありがとう。」
と頭を下げました。
「町を案内してあげるからいらっしゃい。」
道子ちゃんは、命令するように言いました。お父さんたちはニコニコしています。
「束、いっておいで、ここはもう、お父さんひとりでいいよ。港も見ておいで。」
といってくれたので、道子ちゃんと連れ立って町を見物することにしました。
人はぞろぞろとあるいています。やっぱり漁師さんが多いせいでしょうか。日焼けした体は、魚のにおいがします。二人は港のほうを向いていました。
潮風の音が聞こえてきました。乾いた海草がテープのように道を舞っています。ほしてある網に赤いかにの甲羅が引っかかっていたりしていました。
二人は、いつか海岸に出て、堤防に腰を下ろしていました。