港まつり(7)
三ちゃんは、バンドやがま口を売っている店の隣で、昨日の品物を拡げています。
三ちゃんは束のほうを向いて、にやりと笑って見せました。その前には、もう十人ぐらい学生が集まって見います。
人出がだんだん多くなりました。お父さんは声を張り上げて、
「さあ、できたてのこんにゃくとしらたきだよ!さあよく見ておくれ!裏も表もおんなじだ。掛け値なしの一級品の大安売り!」
見物人たちは、その声に足を止めてよってきました。
こんにゃくはどんどん売れます。束はおつりをあげたり、包むのを手伝ったり、大忙しです。
ちょうど夕ご飯にかかるころでしょう。ちょっと客足が減った時、おとうさんはにこにこして、
「よく売れたなあ、この分だと、じきに売切れてしまうで、早く帰れるよ。」
といったときです。
「おやっ?束君じゃあないか!」
と、言った人があるので見ると、知らないおじさんが、女の子と立っています。
「ぼくだよ。そら、君の村で車を落として困っていた運転手だよ!」
「あ!おじさんか。」
と思わず言いました。