港まつり(6)
束は当たりそうなのを選んで一つとると、かどをはがしてみました。中にはなんも書いてありません。
「あれ、おかしいなあ。当たるはずなんだがなあ。」
おじさんはまた一つとって、張り合わせたカードをはがして見せました。当たり・・・・とかいてあります。いつの間にかまわりに来て見ていた人は、げらげら笑い出しました。
おじさんが引くとあたりが出るのに、束はなぜ空を引くのでしょう。ふしぎです。
「おいおい、三ちゃん。商売仲間の息子をペテンにかけるのはよせ!坊や、これはな、インチキなんだよ。ワハハハ!」
教えてくれた人も面白そうに笑っているのです。束は目をぱちくりしています。
「ばかやろう、おいらは社会学を教えているんだ。」
三ちゃんと呼ばれた兄さんは、それでもちょっと、ばつが悪そうに頭をかきました。
次の日の夕方から、お父さんは店を出しました。といっても、道にこんにゃくの箱を並べて、買ってくれる人が来ると、薄板に包んで渡すのです。
魚が荷揚げされる魚市場から町外れにある八幡宮まで、道で物を売る店が立ちました。わたあめや、金魚や、たこ焼き、海草に赤い色をつけた海ホウズキ。いろいろの店が出ています。