港まつり(4)
おとうさんはガラス戸をあけると、店の土間に入ってゆきました。
「もうし、2,3にちとまりたいんですがの。」
「はいはい、どうぞおあがり。」
帳場のようになった所から、おかみさんが言いました。お父さんに手伝わせて、こんにゃくの箱を土間に運びました。
「港まつりの商いにみえたかの?」
「へえ。うれますやろか?」
「そりゃあもう、ぜんぶうれきれるなも。いま猟師は、えろう景気がいいでっせ。」
お父さんは上に上がると、
「ああ、くたびれた。」
といって、畳の上にどっかりと腰を下ろしました。束はお父さんのすぐ横に座ると、めずらしそうにあたりを見ています。
だいぶひろいへやです。でも、もしかしたら、このへやしかないのとちがうでしょうか。
もう何人も先客がいて、寝ている人から、商品を出して調べている人もいます。みんなこの部屋で寝泊りするのでしょう。