マッチ売りの少女(5)
まだ、今日は1束も売れてない上に、寒いので、さっき、何本も擦ってしまいました。おとうさんはおこって、家に入れてくれないかもしれません。
今まで黙っていた郵便箱のおじさんがいいました。
「僕にちょっと名案があるんだ。三人とも、僕の背中に乗りなよ。」
きっと良い考えがあるに違いありません。束が沈んでいる少女を前に乗せ、う後ろへ道子ちゃんが乗りました。
「ううん、まいった。すごく重いぞ。」
それでも、赤い郵便箱のおじさんは、ゆっくりと舞い上がりました。雪がますます激しく降ってきました。いくつかの屋根の上をこえたとき、鉄の扉の閉まった、立派なお屋敷がみえてきました。
窓から明かりが射しています。見れば、大変上品なおばあさんが、床にひざまづいておいのりをしています。
神様、お金はいくらでも差し上げますから、私にかわいい娘をお授けください。
おばあさんは、そう祈っているのです。
束は表の扉をたたきました。やがて中で足音がして、さっきのおばあさんが、ろうそくの明かりを持って現れました。
「おや、いらっしゃい。私は今、たったひとりで、さみしくて、だれかたづねてきてくれないかな、と思っていたところですよ。」
おばあさんは、にっこりしていいました。