こんにゃくの歌 その9
おとうさんが練りだし機の取っ手を回した。と、横についているアミメの出口から、ちょうどチューブから練り歯磨きが出るように、たくさんのしらたきがにょきにょきと押し出されてきました。それがもくもくとゆだった釜の中にぽとぽとと落ちてゆきました。しばらく目を輝かしてみていたおとうさんは、ざるを取って、さっとしらたきをすくい上げました。
「おいっ、できたぞ!ついにしらたきができたぞ!」
お父さんは叫びました。
それでもしばらくのあいだ、お父さんはしらたきを口の中でかんでみたり、まるめて手の中でぎゅっとおしつびしたりしてました。でもはなすとすぐもとにもどるのです。
「ううむ、おどろいたなあモウ!」
おとうさんは、うれしさと驚きのことばを何べんも連発し、お母さんも走ってきて束の手をとると、目に涙が光りました。
「やっとできたのね、もう安心だわ。束さん、ありがとう・・・。」しらたきができるようになると、まるで手のひらを返したように、お得意さんが増えてきました。中にはバスに乗って、町から買いに来るおでんやさんも現れました。
「ここのこんにゃくが一番上等Iだね。こしこししてて味もいいんだよ。わたしゃおでんのたねに年中かいに来るで、夏もやっててくださいよ」