こんにゃくの歌 その6

しらたき。それは細いこんにゃくと言う意味から、糸こんにゃくとも言われています。

束のお父さんは、何度も試しに作ってみたのですが、どうしてもぶつぶつに短く切れてしまったり、反対にだんごのようにくっついてしまうのです。

おとうさんは、どうかして製法を知りたいと思って、人に聞いたり、町のこんにゃくやにそっと見に行ったりしましたが、だれもひみつにしていて、おしえてくれないのです。

町のこんにゃくやは、束の家が白滝の造り方を知らないのをよいことにして、あのいえのこんにゃくをかうなら、うちはしらたきを売らないぞ、といやがらせをいうのです。

そのために、よけいに、八百屋さんや食べ物やさんは買ってくれなくなったのです。

「おとうさん、なんとかして、しらたきの作り方がわからないものかねえ。このぶんだと、こんにゃくの仕事もなくなってしまいそうよ。」

お母さんは、悲しそうです。束はもう家に居られなくなって、そっと外へ出ました。

束は、村はずれの道をとぼとぼと歩いてゆきました。いつかバス駅の前に来ています。束は赤い郵便箱にもたれて、じっと遠い空をみていました。ふと、じょうだんのように、

「郵便箱のおじさん。しらたきの作り方知っていたら教えておくれ。」

と、なにげなくいったときです。

「よろしい、教えてあげよう」

という声がしました。それは、いつか聞いた山のこだまみたいでした。束は思わず辺りを見回しましたが、人影ひとつありません。

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