こんにゃくの歌 その5
「久しぶりに仕事をしたんで、ちょっと疲れたなあ」
と、おとうさんはあせをふいています。
「ありがとう、おとうさん。町のこんにゃくやは動力機で作っているそうだけど、家は手作りだから大変ね」
と、おかあさんは、うれしそうにいいました。
「こんにゃくを作り始めたんだってね。5枚くださいな」
近所の人が買いに来てくれました。束は急いで、そのおばさんの持ってきたおなべの中に、こんにゃくを数えて入れました。
「ありがと、いくら?」
「はい!1枚20円ですから100円です」
おばさんは、束をほめて帰りました。家の中に明るさが戻ったようにみえました。
おかあさんは、自転車の後ろの箱にこんにゃくをいっぱいいれると、
「それじゃ、配達に行ってくるからね!」
と、荷が重くてなれないので、少しよろよろとしながら、それでも元気よく出てゆきました。
おとうさんは、「自動車に気をつけろよ」といってから、ひとり言で、あのこんにゃくが全部売れるようだと言いがな、といっていました。
おかあさんは、お昼ごろかえって来ました。箱の中には、半分くらいこんにゃくが残っています。
「今日が家ではこんにゃく売りの初日だからね。もっと売れると思ったのに・・・・」
おかあさんは、がっかりしたように、
「八百屋さんや食べ物やさんに、置いてもらおうと回ってみたんだがねえ、町の大きなこんにゃくやさんの品物が入れてあるんだよ。みんな、家のお得意さんなのにさ。あんたのところはしらたきがないからいらないって、断る家もあるんだからねえ・・・・。」
「これからは、こんにゃくだけではだめだな・・・・」
おとうさんは、ぽつりいいました。