こんにゃくの歌 その4

でもお父さんは知っているのです。

自分が配達していても、減ってゆくこんにゃくの注文を、おかあさんがやってよくなるはずがありません。

もうひとつ。町のこんにゃくやが持ってくるしらたきという糸こんにゃくのつくりかたを、お父さんは知らないのです。

今では田舎の人たちも肉を食べるようになって、いっしょに煮る、しらたきの売れ行きがよいのですが、束の家が作らないので、よその町のこんにゃくやに変わってしまう店もありました。

おとうさんは、やっと起きられるようになりました。ときどき近所の人が店に来て、

「もう、こんにゃく作りをはじめたかね?」

と、ききます。ぼつぼつ売れる時期になったのです。

「よし!今日からやるぞ!」

お父さんは元気よく言いました。束はうれしくてたまりません。

まきを運んだり、大がまに水をくんだり、足の悪いお父さんを助けて、仕事場の中を動き回っています。

さあ、いよいよこんにゃくづくりです。

ぐらぐらと煮立つ大がまの中から、やわらかくなったこんにゃく芋を、柄の付いたざるですくい出すと、悪い皮の所を、竹のへらでむいて芋を潰す機械の箱の中に入れます。次に回転棒を足で踏んで動かすと、芋はつぶれて、のりのように粘って出てきます。これに石灰を溶いた水を入れてよく練ると、かたまってきました。

今度は四角のブリキの浅い箱の中に、空気の泡の入らないよう、べたべたと押し付けてしっかりとつめます。

このこんにゃくの詰まったブリキ箱を、もう一度湯の中に入れて煮ると、やわらかい弾力のあるこんにゃくになるのです。これを型に入れて切って、さあ、できあがりました。

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