こんにゃくの歌 その2
お父さんは山からおりてくると、家で家業のこんにゃくやをはじめるのです。その日からお母さんも農家に手伝いに行くことはやめて、お父さんの仕事を手伝います。
こんにゃくは、寒い時がよく売れます。
それで、束の家のように小さな店では、冬の間しか仕事がありません。その冬のわずかな仕事も、年毎に減ってきました。
それは町のこんにゃくやが、自動車でどんどん売り込みに来るようになったからです。
束の家では、作ったこんにゃくを家で売ったり、お父さんが自転車で、村や近くの八百屋さんなどに卸していました。
でも、そのすくないお得意さんも町の大きなこんにゃくやが意地悪く取っていくのです。中には長い年月を、お父さんと付き合ってきた店もありました。
運の悪い時は、色々な不幸がおきるものです。ことし、お父さんが山から下りてくる頃になって、大変なことが起きました。山で、お父さんが大怪我をしたのです。
倒れてきた大木の下敷きになったと言うことです。
仲間の人に担がれて帰ってきたお父さんの顔はまっさおでした。
おかあさんは「おとうさん!おとうさん!」と、気違いのように叫びながら、急いでで床に寝かしました。おつさんは、「ううん、ううん」とうめくだけです。