こんにゃくの歌 その11
「郵便箱のおじさん、おはよう。」
「やあ束君、おはよう。」
あの日から、束は回り道をしては、学校の行き帰りには、ここを通ることに決めました。人のいないときだけ、二人は話をしました。
「どう?お父さんの商売、いそがしい。」
「うん、おかげさまでね」
と束は大人のまねをして答えました。
「みんなおじさんのおかげだよ。」
「うふふふ。そういわれると、てれるなあ。ところでね。ぼくはきょう、こんにゃくの歌を1つ作ったんだ。聞いておくれよ。」
ぼくはこんにゃくだよ
顔はそばかす あばた面
裏も表も無いけれど、中身はなかなかいかすんだ
おでん すき焼き にしめ 味噌和え とうふあえ
太った人には美容食
ぼくの生まれは山の畑 ごろごろ出てきた小芋君
色が黒くてぶあいそう
だけど みんなにすかれてるよ
なかなかよい声で、郵便箱のおじさんは歌いました。束はおおよろこび。
「ううん、おもしろい詩だなあ」
「えへ、ありがとう」
郵便箱は、ちょっとはにかんだように言いました。
「さあ、もう学校へいきなよ!」
そのとき、すずめが飛んできて、とまりました。
「束君、いま、あわて者のすずめ君の知らせにはね、学校前の道で、薬品を積んだ自動車が田んぼに落ちたそうだ。見ておいで!」