マッチ売りの少女(7)
束は郵便箱のおじさんに頼んで、人形を少女の倒れていた空き地に運びました。まだそこにはマッチの燃えカスが落ちています。
束は人形をおろすと、さっき少女がしていたように、うずくまらせました。雪は休みなく降っています。
次の日の朝、マッチを持って雪をかむったまま動かない人形を見て、人々は、ああ、あのマッチ売りの少女は、凍え死んだのね、かわいそうに・・・・。と、ささやきあいました。
まもなく、赤い郵便箱は、青い大海原の上を飛んでいました。頭の上には太陽がぎらぎらと輝き、水平線に時々現れるちっちゃな島には、ヤシの木が茂っていたりしました。
束も道子ちゃんも、赤い郵便箱も黙っています。きっとマッチ売りの少女を助けた感動を味わっているに違いありません。あの少女も、これからは、幸せな日が続くことでしょう。郵便箱のおじさんは、
「ちょっと遅くなったな。」
というとグーンとスピードを出しました。
郵便箱のおじさんが、二人を下ろしたのは、人影のない海岸の波打ち際です。
「さあ、もう自分で帰るんだよ!」
と急いで言うと、真一文字に東の空へ飛び去りました。きっとあの束の村の自分のすみかへ帰っていったのでしょう。
二人は苦心してがけを上りました。あがってから見るとそれは道子ちゃんが小さい時きたことのある港町の岬の上でした。
お父さんたちが心配しているといけません。二人は駆け出しました。